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エアロパーツ、ドレスアップのダムド|DAMD Inc

DAMD JOURNAL

DAMD JOURNAL _086

創造性を高めるアウトドア・プロダクト。YOKA

便利で快適な生活に浸りきっていると
逆に冒険心を掻きたてられることがある。
だからこそ人はアウトドアへと繰り出す。
そこに寄り添ってくれるのが『YOKA』だ。
椅子やテーブル、テント、最近では七輪など
優れたデザインと高機能を提供してくれる。
独特の視点を持ったYOKAのものづくり。
その考えかたを、そして情熱を掘り下げた。

「デザインや設計ではなく“発明品をつくりたい”」

「ダムドのコンプリートカーって、どこまでが元来のデザインで、どこからを変えているのかが、まるでわからない。それだけ調和している証であって、そこにデザイン力、開発力の高さを感じます。私がいつもプロダクトをつくるときに念頭に置く“最小の一手で、最大の効果を発揮する”というのを、見事に実践されているように思います」

 

アウトドアプロダクトブランド『YOKA』(株式会社トゥエルブトーン)の代表であり、みずからデザイナー兼エンジニアとして腕をふるう角田 崇さんは、ダムド・フリード・クロスターを前にそう話しながら、自分がイチからつくった椅子に腰掛けた。

角田さんのつくるプロダクトづくりには思慮に富んだ考えがある。それは、ものづくりの真理をついているといってもいい。

 

「僕は決してキャンプギアメーカーではないし、まして家具職人でもない。もっと広い視野をもって“プロダクト”だと捉えています。たとえば芸能人とかスポーツ選手とか、インフルエンサーとか。経営者でも、会社員でもいい。誰もが自分の役割を認め、世に提示して生きるモチベーションにしているのだとすれば、僕にとってそれはプロダクトをつくることでした。デザインや設計としているというより、常に“発明品をつくりたい”と思って取り組んでいます。キャンプに代表されるアウトドアフィールドは、僕らしいプロダクトへの考えかたを投入しやすい場であり、カルチャーでした」

2015年に走り始めたYOKAの初陣は、木製の椅子とテーブルだった。その後、調理用の鉄板や焚き火台など、次々とキャンプギアを拡充していく。オリジナルのデザインにこだわり、試作品をつくっては何度も自分で使い勝手を試し、キャンプ仲間からの意見もどん欲に吸収した。それらは単にデザインがいいという範疇を超え「椅子やテーブルという道具に、折りたためて持ち運びができる」という機能を追加した立派な“発明品”となった

機能を突き詰めたら、それは美しさになる。

「機能とは関係のない加飾はしない。けれどもシンプルにしすぎて機能性を削ぎ取っても意味はない。プロダクトには必ず求められる機能があり、その使い勝手を揉んでいくなかで、必要最低限の要素を見極めると素直にカタチができていくのだと捉えています。いったい、どのようなカタチに着地させるべきなのか。その最適解さえ見出すことができたとしたら、そのプロダクトは必然的に美しくなるのだと思います」

 

それはあらゆるプロダクトに共通する普遍的な事柄だと思えた。トップアスリートが使うスポーツギアが問答無用でカッコいいのは、F1マシンが僕たちの心を捉えて離さないのは、それは究極的なプロダクトを追い求めたがゆえの“美”なのだろう。少なくともスポーツギアやF1マシンのデザイナーやエンジニアは、カッコいいモノをつくろうなどとは微塵も考えていないはずだ。勝つために必要な機能を無駄なく表現した結果である。

無限に広がる、プロダクトの使いかた。

近年、評判を呼んでいるのがYOKAの七輪(YOKA SHICHIRIN++)だ。炭火を利用した七輪のルーツは、江戸時代にまでさかのぼる。この道具に着想を得た角田さんは、七輪が持ちうる機能をキャンプやアウトドアにフィットさせようと、ステンレス製の七輪をつくった。単に素材を置き換えただけではない。「空気穴をなくす」「フタ付きにする」「炭をかごに入れる」「網を二段にする」「取手を断熱する」など、さまざまな工夫を取り入れることで、自宅に居座るべきものから、キャンプやアウトドアへ持ち込むことが容易なものへ。400年ぶりのアップデートにより、七輪はキャンプギアへと見違えたのだ。

「おかげさまで、七輪を囲んでキャンプをしながらお酒を飲む“七輪会”なんて企画も生まれたりして、いまでは誰よりも自分自身が楽しんでいます。今後は、七輪を囲む空間をより充実させるためのプロダクトを考えていきたいと思っています」

七輪に代表されるようなプロダクトを軸に据えて、今後はもっとアウトドアの領域を広げていきたいという。たいそうな準備をして山奥へとキャンプに繰り出されなくても、自宅に庭があって周辺環境が許せば七輪での料理は楽しめる。「キャンプギアとは、こうあるべき」という固定観念は取っ払っていい。もっとカジュアルで、つきあいやすいプロダクトづくり。そういう概念を世に訴求しはじめている。

 

「昔から創作おもちゃとか、知育玩具みたいなものをつくるのが好きだったんです。単体で完成されたものではなくて、つくり手が何かしらのアクションをしないと成り立たないもの。あるいはつくり手の最終的な個性が加わって完成するもの。キャンプギアなんてまさにそうですよね。僕は機能としての道具を提示し、提供をするけれど、いざ現場に赴いてそれらをどうレイアウトするか。どんなアクティビティを楽しむか。七輪を使ってどんな料理をするか。それらすべては使い手に委ねられている。キャンプギアに限らず、そんな創造性を持たせたものをつくり続けていきたい」

それはクルマも同じだと思えた。完成された工業製品であることは紛れもない事実だ。しかし、どう着こなし乗りこなすかはユーザーに委ねられる。ダムドが提供するパーツやコンプリートカーならなおさら。数多あるアフターパーツを巧く取り入れながら、オンリーワンの愛車に仕立てることができる。この日、キャンプに使ったフリード・アイソレーターだってそう。コンプリートカーとしてまとまっているものの、どう自分色に染めようとも、キャンプに限らずどんな趣味に使おうとも、そのすべては乗り手の自由だ。

 

僕らの個性を活かしてくれる余白がある「お気に入りのもの」と一緒に過ごすと、創造性が膨らむことを知った。そんな創造性をたくわえながら、次はどこへ行ってみようか。いつも手に馴染むYOKAがあれば、それらをフリード・アイソレーターに詰め込む瞬間からこう思うに違いない。次の週末も絶対に楽しくなるはずだ、と。

 

文:中三川大地
Text : Daichi Nakamigawa

 

写真:真壁敦史
Photos : Atsushi Makabe

 

YOKA

 

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