DAMD JOURNAL

DAMD JOURNAL _093

道がないことの愉しみ。 DAMD X BEE Little D.

都心の雑踏を滑るように駆けぬけ
ハイウェイをひとっ走りすれば
そこは四季折々の自然が広がっている。
クロスビー・リトルディーなら
自然と向き合える。一体になれる。

 

主役はあくまで自分自身であり
たいせつな人との時間だ。
忙しない日常の合間に引き寄せる
かけがえのないひととき。
お気に入りのアウトドアギアを用意して
日常から脱出しよう。

派手なネオンを押しつけるクラブから
SNSでバズった曲が大音量で流れている。
少しずつ、世界が遠ざかっていく。
現実感が1枚ずつ剥がれ落ち
アルゴリズムでつくられた
数学的な世界が脳を支配する。
ダンスミュージックを構成する音が際立ち
音符の一つひとつが脳裏で踊っている。

 

ライトアップされた高層ビル群が
夕闇のなかから浮かび上がってみえる。
最上階で点滅する航空障害灯が目にまぶしい。
すべてがいまに収斂し、世界はさらに遠ざかっていく。
未来もなければ、過去もない。
ただ、いまここに存在するだけ。
まるでゲームの世界へ放り出されたようだ。

まだ見ぬ、その先へ――。

 

ぬかるんだ砂利道を軽やかに駆けぬけ
一寸先のみえないカーブの、その先を目指す。
クロスビー・リトルディーの顔つきからは
道という概念すら、必要ないと訴えかけてくる。
あらゆる未開の領域へと突き進めばいい。
それはやがて、僕にとっての道となるのだから、と。

クロスビー・リトルディーは
仮想から現実へと連れ戻してくれる相棒だった。
本質的な魅力だけを抽出してくれる。
いまよりもっと豊かな人生を送るため、
誰も知らない得難い体験をするための
僕にとってのたいせつな伴走者――。

 

本物とは派手さではない。
日常を支えるためにある。
それは僕の日常であり、誰かの日常だ。
たいせつな人の日常であれば、なおさらいい。
世界には、もっと過酷な環境下で、
人々の暮らしを支え、ときには命までを
守ってきたクルマがある。
それが自動車としての“本質”だ。

それは人生としての“本質”までを教えてくれた。
人生を、前へ前へと進める牽引者と言い換えてもいい。

 

「何がなんでもたいせつな人を守る」と、
クロスビー・リトルディーが訴えかけてきた。
その顔つきは誰よりもたくましく、
そして誰よりもやさしい表情をしていた。

 

池に落ちたブーゲンビリアの花が、
はげしい雨滴に踊っていた。
この景色へとたどり着く道は
きっとアルゴリズムでは導き出せない。
いつだって、自分で見つけるものだ。

 

ブーゲンビリアをそっと手で救った。
なぜか、僕が救われた気がした。

 

 

文:中三川大地
Text : Daichi Nakamigawa

 

写真:真壁敦史
Photos : Atsushi Makabe